人と人のつながりの不確かさを再認識する 川上弘美の「おめでとう」を読んだ

1週間ほど前、彼氏と喧嘩をした。

理由も忘れてしまうような、しょうもない理由での喧嘩。

それがきっかけで、一緒にいるのにお互いどこかもやもやして、

2人の時間を楽しみきれないまま1週間が過ぎた。

 

昔から本を読むと、自分が言葉にできていなかった自分自身の気持ちに気が付くことが多い。言葉にできないから、それが一体何なのか自分でも理解できなくて、考えるのもめんどくさいから放っておいてしまう自分の中の何か。

そんな時本を読むと、自分の心を表現してくれている文章に出会う事がある。

恋愛にもやもやしたので、久々に恋愛小説でも読んでみるかと、誰かのブログで紹介されていた川上弘美さんの短編集「おめでとう」を読んだ。

短編それぞれが、とある2人の他愛もない会話や日常を切り取った作品。

どの短編でも、出てくるのはほとんど2人の世界だけ。

2人がそれぞれ生きているであろう外の世界についてはほとんど説明せず、2人の会話や行為が描かれていく。そしてその些細な会話の一つ一つに愛情と寂しさが詰まっていて、2人の関係の不確実さを感じさせる。

忘れてたけど、お互いどんどん変わっていってしまうんだ。

それぞれにとって良い変化でも、2人を結びつけていた繊細な世界は、そのバランスを失ってしまうかもしれない。

そんな当たり前の事にはたと気付いて、こうして一緒にいられる時間も、実は僅かかもしれないと、そう思ったら、今こうして一緒にいられる事が、すごくありがたい事に感じられた。

気持ちのもやもやなんかどーでもいいや。目の前にあるこの関係を大切にしよう。

そう思わせてくれた小説でした。